漆喰は塗り壁材料の中でも群を抜いて古くから用いられ、日本ではおよそ1500年の歴史があります。
防火性や耐久性の観点から城郭、武家屋敷、町屋などの内外壁に多く使用され、その技術は長い歴史の中で培われ洗練されてきました。
漆喰はどのように日本に伝わり、どのように使われてきたのか
漆喰の起源は今からおよそ5000年前、エジプトのピラミッド建造に使われたのが始まりと言われています。
その後世界各地に伝わり、日本には西暦538年ごろ、中国、朝鮮半島を経て仏教の伝来とともに伝わりました。
飛鳥時代、奈良時代の神社仏閣建築に使用され、平安時代には高級建材としてさまざまな建築物に使われるようになりました。
漆喰が最も発展するのは戦国時代の築城ブームの到来によるものとされています。
漆喰の優れた防火性、耐久性が認められ、城郭建築に多く使用されました。
江戸時代になると、度重なる火災から建物を守るため幕府は防火条例を出し、漆喰で塗りこめた防火性に優れる土蔵造りが商人の間に広まっていきます。
それまで漆喰の糊剤には高価な米糊が使用されていましたが、海藻糊を使用した比較的安価な漆喰が開発され、一般庶民にとっても身近な壁材となりました。
明治時代に入ってからも防火条例は続き、都市の商業建築などで土蔵造りがさらに普及します。
そして政府の政策によって公共建築物に導入された西洋の建築様式にも漆喰が取り入れられ、それらの建築物の中には現代もなお、変わらずその姿を残しているものが多くあります。
このように、飛鳥時代に伝来してから城郭建築、土蔵造り、洋風建築の時代まで、漆喰の白い壁は日本の風景を作ってきました。
気密性の高い現代の住宅にも最適な漆喰壁
戦後の高度経済成長期以降、住宅需要の増大や建築材料の多様化に伴い、作業が早くて価格の安いビニールクロスをはじめとする石油化学製品の建材が多く使われるようになりました。
しかしそれらの代償として、アレルギー反応を引き起こすシックハウス症候群が社会問題となりました。
近年では自然素材や住宅環境に対する関心が高まり、アレルギーリスクゼロの漆喰が再評価され増えてきています。
漆喰の凄いところは、シックハウスの原因物質を一切含まないだけでなく、一番の原因物質であるホルムアルデヒドを吸着し、さらに分解して無害化までするところです。
このような建材は漆喰をおいて他にはありません。
建物の気密性の向上により、建材や家具などから発生する化学物質の室内濃度が高くなりやすい現代の住宅にも、漆喰は最適なのです。
住まいを快適にする、漆喰壁の嬉しい機能
アレルギーリスクを大きく低減させるだけでなく、他にも調湿・消臭・抗菌など、住まいを快適にしてくれる嬉しい機能がたくさんあります。
漆喰の表面にはスポンジ状の小さな穴がたくさん空いており、湿度が高い時には水分を吸収し、逆に乾燥している時には水分を揮発する特性があるため、年間を通じてお部屋を快適な湿度に保つことができます。
結露やカビの発生を抑制してくれるため、一昔前の住宅では押し入れによく漆喰が塗られていました。
土蔵内の古文書などの保存状態が良いのも、この特性によるものなのですね。
漆喰壁の機能についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。